アドプロ 2018.05.28

再帰

これまでは,繰り返し処理を記述するために, 反復(forwhile)を使ってきた. 今回は,再帰を導入し, 繰り返し処理をさらに効率良く記述しよう.

特に,規則性のある数列(等差数列,等比数列,等)や 階層的な構造(樹形図,等)を対象とする場合, 再帰は非常に有効である. 今回は,フラクタル図形を題材とし, タートルグラフィックスを再帰的にプログラミングしてみよう.

...作業に移る前に,いつもの準備をお忘れなく,


漸化式と再帰

まず,再帰を理解するための具体例として, 数学の問題 「自然数 n の階乗 f(n) = n! の計算」 を考える.

まず,反復により記述してみよう. 計算式 f(n) = 1 × 2 × 3 × … × n = (...(((1 × 1)× 2)× 3)×...)× n に従えば,階乗関数 factorial( ) のソースコードを次のように書ける. ソースファイル fact.c

#include <stdio.h>

// 自然数 n の階乗 n!(反復版)
int factorial(int n)
{
	int i, f;
	
	f = 1;
	for (i = 1; i <= n; i++) {
		f = f*i;
	}
	return (f);
}

// 動作テスト用メイン関数
int main()
{
	int n;

	for (n = 1; n < 5; n++) {
		printf("%d! = %d\n", n, factorial(n));
	}
	return (0);
}

コンパイルと実行:

$  cc  fact.c  -o  fact
$  ./fact
1! = 1
2! = 2
3! = 6
4! = 24
5! = 120
このプログラムは:

一方,階乗 n! の計算は, 漸化式 f(n) = f(n-1) × nf(0) = 1 によっても表わせる. この式に従えば,ソースコードは次のようになる:

メイン関数は上と同じ. fact.c を書き換えて,コンパイルし,実行しよう. そして,実行結果が同じになることを確認しよう.
...

// 自然数 n の階乗 n!(再帰版)
int factorial(int n)
{
	if (n == 0) return (1);		// 終了条件 f(0) = 1
	return (factorial(n-1)*n);	// 再帰処理 f(n) = f(n-1) × n
}

int main()
{
	...
}

このように,関数が自分自身を呼び出すのが再帰である. (factorial() の定義内で factorial() を呼び出している.) この再帰版プログラムでは,反復版と比較して, ソースコードが非常にコンパクトになっている. (関数 fact() の定義において, 本質的な部分のコードが 4行から 2行へ削減された.)

ただし,再帰処理では, 繰り返し回数(再帰呼び出し回数)に比例してメモリを消費する. そして,コンピュータのメモリ容量は有限である. 再帰呼び出しの終了条件の記述を 絶対に忘れないこと!

永久に再帰を続けると,メモリが不足し,そのプログラムは異常終了してしまう.

フラクタルと再帰

タートルグラフィックスに再帰処理を適用し, フラクタル図形を描いてみよう. なお,フラクタルについては,以下のリンクなどを参照:

まずは,コッホ曲線を例とする. Fig.1 (a) のように, ジェネレータ(図形の変換規則,基本曲線)を定義し, 基準辺を再帰的に曲線に置き換えて行く. (基準辺をジェネレータへ変換. ジェネレータの各直線部分を基準辺とみなし,更にジェネレータへ変換. ...)

アルゴリズム:

このような簡単な規則だけで,最終的に,(b) のような複雑な図形が生成される. また,イニシエータ(複数の基準辺の組み合わせ図形)を定義しておけば, 更に多様な図形も生成できる.

(a) 描画方法 (b) 描画結果
Fig.1 コッホ曲線
コッホ曲線は,自然界の海岸線のように見える. 多角形をイニシエータとすれば,島のような図形が現れるだろう.

この描画方法にしたがって,プログラミングしてみよう. ソースファイル koch.c

#include "kame3d.h"

// コッホ曲線を描く再帰関数
// len:基準辺の長さ
void koch(double len)
{
	if (len < 0.25) {		// 終了条件
		Move(len);			// 基準辺
	} else {			// 再帰処理
		koch(len/3.0);			// 辺AB
		Turn(60.0); koch(len/3.0);	// 辺BC
		Turn(-120.0); koch(len/3.0);	// 辺CD
		Turn(60.0); koch(len/3.0);	// 辺DE
	}
}

int main()
{
	Init("Koch Curve");
	SetColor(6);
	Goto(-4.0, 0.0);

	koch(8.0);

	Play();
	return (0);
}

練習問題

Fig.2 の描画方法にしたがって, 各種フラクタル図形を描け. なお,ジェネレータの図における赤色の矢印は, 描画終了後のタートルの位置と方向を表している.

描画方法描画結果
↓ C 曲線
↓ ドラゴン曲線
↓ ブロッコリー(or 木)
Fig.2 各種フラクタル図形

C 曲線とドラゴン曲線では,次のことに注意:

ブロッコリーでは,次のことに注意:

ブロッコリーの応用で,非対称分岐や三分岐なども面白い. 様々な樹種を表現できる可能性がある. 数値にランダム性を加えれば,より自然な図形になるかも.

また,フラクタルの例は,他にもいろいろあるので,調べること. さらに,角度などの定数値を少し変えるだけでも, 結果に大きな変化が現れる場合がある.

いわゆる「 バタフライエフェクト 」.

(c) 2018, yanagawa@kushiro-ct.ac.jp