POV-Ray のウォーミングアップ
今回から中間試験まで，プログラミングの対象を 3D-CG とする．
3D-CG 記述言語 POV-Ray を利用し，
複雑なシーンのアニメーションを効率的に記述できるようになろう．
今回は，初心者用の学習キットで練習し，POV-Ray の雰囲気をつかもう．
とりあえず使ってみる
モデリング（シーンファイルの編集）
モデリング（modeling）とは，CG の設計作業のことだ．
POV-Ray の場合，人間が
シーンファイル（拡張子：.pov）を
エディタで編集することになる．
なお，シーンファイルをゼロから作るのは大変なので，
今回はとりあえず，シーンファイルのサンプル
test.pov
をダウンロードして使おう．
（本日の作業用ディレクトリにダウンロードせよ．）
このシーンファイルの内容をエディタで確認してみよう：
$ gedit test.pov &
今回はまだ，内容を理解できなくても良い．
レンダリング（画像の作成）
レンダリング（rendering）とは，CG の描画処理のことだ．
POV-Ray の場合，povray コマンド によって，
コンピュータがシーンファイルを画像ファイルへ自動的に変換してくれる：
$ povray test.pov
うまく行けば，画像が（一瞬だけ）表示された後，
画像ファイル test.png ができているハズ．
$ ls
test.png test.pov
結果確認（画像の表示）
画像を再確認するには，display コマンドを使えばよい：
$ display test.png &
この display は，
画像処理ソフト集 ImageMagick の一部であって，
POV-Ray 専用のものというわけではない．
画像表示の他の手段としては，ウェブブラウザも使えるし，
最近の Linux では，eog コマンドとかでもよい．
またはレンダリングの際，
コマンドにオプション +P を指定すれば，
結果表示を一時停止（pause）できる．
$ povray +P test.pov
場合に応じて，これら２通りの方法を使い分け，
作業を効率的に進めよう．
例えば：
- シーンファイルを修正した時には povray +P で再度レンダリングし，
新規の画像を生成・表示する．
- 直前のレンダリング結果を再確認したいだけの場合，再レンダリングは不要．
display で既存の画像を表示だけする．
もう少し具体的に？
- 単純なシーンの場合，レンダリングは一瞬で完了するので，
毎回レンダリングしなおすのでも問題はない．
→ +P 方式だけでも OK．
- 複雑なシーンや高品質な画像の場合，
レンダリング処理には相応の時間（数分〜数時間!〜数日!!）がかかるので，
毎回レンダリングし直すのは非効率．
→ +P と display を併用．
- アニメーションのように複数枚の画像を連続的・自動的に生成したい場合，
１枚ずつ確認するのは非常に面倒．
→ +P は不使用．
povray コマンドの使い方
povray コマンドの一般形は，こんな感じ：
$ povray オプション引数 シーンファイル名
次表のような，複数のオプション引数を自由に組み合わせ可能である．
povray コマンドの主要オプション
| 引数 | 意味 | 既定値
（ver.3.7） |
|---|
| +P | 画像を表示したまま一時停止 | |
| +W整数 | 画像の横方向のサイズを指定 | 800 |
| +H整数 | 画像の縦方向のサイズを指定 | 600 |
| +A実数 | 画像の微細度（品質）を指定 | 1.0 |
ここで，画像サイズについては，通常は，
縦横比が 4:3 になるように指定する必要がある．
また，微細度については，値が小さいほど高品質になる．
縦横比を変更したい場合，シーンファイル内で，その旨の指定が必要になる．
が，初期段階では気にせず，最終仕上げ段階で変更すればよい．
なお，解像度が高い（サイズが大きく，微細度が小さい）ほど，
レンダリングに時間がかかってしまう．
この原則に注意して，作業を効率的に進めよう．
例えば：
- 制作初期段階では低解像度でレンダリング．
- 最終仕上げ段階で高解像度でレンダリング．
シーンファイル作成の練習
今回は肩慣らしのためのお遊びです．
中学生向けの POV-Ray 体験コースを試してみよう．
この体験コースでは，F1 マシンの部品があらかじめ用意されているので，
作業はプラモデル感覚で，作品は簡単に出来上がってしまう．
今後は，より基本的な形状を元にして，
必要な部品を独自に作り出して行くことになる．
もちろん題材は，F1 に限らず，自由だ．
ちなみに，POV-Ray では，レイトレーシング（ray-tracing）等の
高度なレンダリング手法が利用されており，
モデリング次第では，極めて現実的 or 幻想的な画像を生成できる．
また，特別研究などで説明図の作成に利用すれば，
プレゼンの説得力が増すかもしれない．
次回から，さまざまな技を習得して行こう．
本日の課題
POV-Ray でオリジナル F1 マシンの CG を作成せよ．
担当教員へレポートを送信せよ：