釧路新聞への投稿(1999年)
さまざまな情報が閉塞なく行きかう、まちづくりを
まちづくりにおいて、住民参加は必要不可欠のものであり、これが欠如していては住民のコンセンサスは得られず、わかりずらい不透明な行政主導のまちになってしまいます。
近年、住民参加の方法は様々に生み出され、試行されています。定番のアンケート調査、ヒアリング調査、市民のアイディアを募りコンペによる施設づくり、市民代表者を加え様々な計画づくりの関係者が集う協議会、老若男女を問わずみんなで問題を発見し検討しアイディアを出しあうワークショップなど、いろいろな手法が生み出され各地で試みられています。
私が関わった浜中町西円朱別の農村公園づくりは、地域住民の方々が主体となり開基70周年を記念した事業です。基本計画づくりは、住民主導(行政・農業普及センターのバックアップはあったが)によって小学生からお年寄りまでを交えた議論を行うワークショップ方式をとったものでした。
このワークショップは(1)住民自身による公園点検(良い点、改善すべき点、保全すべき点)(2)具体的な計画づくり(3)計画の整備優先順位、将来の管理維持計画を検討するものでした。ワークショップでは参加者の意見を出しやすくするためにフリーの発言に先だってポストイットに各自の意見を書いてもらい、ひとつひとつの意見を平等に扱いました。(ただし、参加者が欲求不満にならないためには進行役の手腕によるところが大きいのです。)現在は住民自ら汗を流し公園づくりを進めています。
さて、私はこの住民参加とまちづくりを最近の研究テーマとして取り組んでいて、特に数年前インターネット技術が社会還元されだすころから、電子ネットワークを利用した住民参加のまちづくりに着眼しました。
言うまでもなく、ネットワーク社会は時間的制約、空間的制約がなく、まちづくりの情報が手に入り、自由に自分の意見を発進できる魅力あるものです。現実のまちづくり情報の発信中心である多くの自治体は、単なる広報誌のコピーを流しているに過ぎません。言いかえるなら、ネットワーク上では行政から市民への単一方向が主で、行政と市民との双方向のやりとりは極めて限定的です。
なぜ、こういった状況が発生するのか?昨年、ネットワークを利用した計画づくり(主に都市の将来ビジョンを描くマスタープラン)を策定中の自治体にアンケートを行い、現在、このアンケートを分析し、行政が発進しやすく、市民にわかりやすい魅力的な情報発受信モデルを作成中です。
この研究テーマと併行に、農村景観をキーワードとした取り組みも行っております。そのひとつに一昨年観光ルート沿道景観形成推進協議会に参加させていただいたおりに、問題とされた農業廃屋があります。日頃から農村のむらづくりを見てきましたが、廃屋の実態はつかみきれておりませんでしたので、昨年、道内自治体に廃屋とその再利用に関するアンケート調査と事例調査を行いました。農業経営、防犯上、農業廃屋は撤去すべきという考えにいきがちですが、文化、歴史的価値の視点、あるいは産業廃棄物処理の視点から再利用の可能性をみいだすべきで、再利用のための情報や問題を整理しているところです。
私は札幌出身で釧路にお世話になって12年程度ですが、研究分野柄、地元釧路地方のまちづくりがさらに元気になるよう、研究者の目で厳しく見ていきたいと考えております。