釧路高専第2回若手理・工学セミナーを開催しました

釧路高専第2回若手理・工学セミナーを開催しました

12月20日(金)及び21日(土)の2日間,本校大講義室において,日本各地から多分野の研究者,大学院生にお集まりいただき,第2回若手理・工学セミナーを開催しました。

本セミナーでは,本校から建築学科の桒原浩平先生,電気工学科の斎藤誠紀先生,機械工学科の福地孝平先生が発表を行い,一般参加者15名に加え,本校の学生も14名参加するほど大変盛況で,活発な質疑応答や,分野をまたがっての熱い議論が繰り広げられました。

また,大学院生の発表に対して,本校の学生から質問が出るなど,研究とはどういったものなのかについても学ぶことができた大変刺激となる良い機会となりました。

なお,第3回若手理・工学セミナーは,2014年の夏に開催を予定しています。

お問い合わせは,世話人の福地孝平(釧路工業高等専門学校 機械工学科)までよろしくお願いします。
      電話:0154-57-7297
      e-mail:k_fukuchi@mech.kushiro-ct.ac.jp

本セミナーの講演プログラムは,こちらをご覧ください。

具体的な発表内容は以下のとおりになっております。

福地孝平先生(本校機械工学科 助教)

題目:炭素繊維含有Al基高熱伝導複合材料の機械的性質と内部組織の関係

アブストラクト:
高い熱伝導特性や強度特性などを有するカーボンナノチューブ(CNT)のようなナノ・マイクロサイズの炭素繊維を含有することにより,アルミニウム(Al)の約3倍の熱伝導率を有するAl基高熱伝導複合材料が開発された。
本研究では,本複合材料の熱・強度特性について明らかにし,材料の変形による熱伝導特性の変化について実験と解析から検討した。


福地先生の発表の様子

瀧田敦子さん(北海道大学大学院工学院人間機械システムデザイン専攻 博士後期課程2年)

題目:インデンテーション試験による材料特性評価

アブストラクト:
インデンテーション試験は,圧子を試料に押込むだけの容易な試験であり,試験片形状に制約がない。微小領域を変形させるため,使用状況下で部材強度を評価することに応用が期待される。今回は,インデンテーション試験による弾性特性,クリープ特性の評価手法を紹介する。さらに具体例として,電子基板上はんだ接続部を対象としたインデンテーション法による評価結果の活用例を挙げ,その問題点を明らかにして解決手法を提案する。


瀧田さんの発表の様子

平山浩之さん(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 博士後期課程3年)

題目:Well-posedness and scattering for a system of quadratic derivative nonlinear Schrodinger equations at the scaling critical regularity

アブストラクト:
本講演では1階の微分を含む2次の非線型項を持つシュレディンガー方程式の連立系の初期値問題について考える。ラプラシアンの係数がある条件を満たす場合には非線型項における可微分性の損失を回復することができ,特に高次元の場合にはフーリエ制限ノルムを精密化したU2,V2型のノルムを用いることによってスケール臨界なソボレフ空間における適切性および解の散乱が得られることを示す。


平山さんの発表の様子

竹内佑介さん(北海道衛星株式会社 研究員)

題目:ハイパースペクトルカメラと超小型衛星産業

アブストラクト:
北海道衛星プロジェクトのミッション機器として開発をした「分光情報を画像として捉えることができるハイパースペクトルカメラの開発」と,「日本初の『ほどよし信頼性工学』を導入した超小型【ほどよし衛星】」における,現在・未来の宇宙ビジネスの展望について述べる。


竹内さんの発表の様子

加藤千智さん(横浜国立大学大学院工学府システム統合工学専攻海洋宇宙システム工学コース 博士前期課程1年)

題目:空力弾性現象が微小重力実験機の姿勢に及ぼす影響

アブストラクト:
現在,宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,低コストで1分間程度の微小重力環境を実現する手段として,気球から投下する,有翼の飛行機型実験装置の開発プロジェクトを進めている。本実験機は超音速エンジンの作動試験にも用いられるが,飛行速度が音速に近づくと翼に振動が生じ,機体の破壊につながる。本研究では,流体方程式と構造方程式を連成し解き進めることで,この振動の発生を抑え,安全な設計指針を提供することを目的とする。


加藤さんの発表の様子

香川智修先生(東京都市大学 非常勤講師)

題目:Semiclassical limit of the Schrodinger kernel of the sub-Laplacian on the h-Heisenberg group

アブストラクト:
Heisenberg群の群演算にパラメータを(0に極限を取ったときユークリッド空間になるように)入れたものを考える(h-Heisenberg群と呼ぶ)。そのh-Heisenberg群上の左不変ベクトル場から構成されるsub-Laplacianに対するSchrodinger方程式を考え,その基本解となる核関数を構成する。その核関数のパラメータを0極限を取ったとき,どのような現象が起こるかを研究した結果について報告する。


香川先生の発表の様子

楢崎政宏さん(九州大学数理学府 博士後期課程3年)

題目:Laplace積分の減少度と漸近展開

アブストラクト:
Laplace積分は,Laplace変換の一般化として位置付けられる。Phase関数が実解析的な場合については,t→∞としたときの減少度,漸近展開が既に得られているが,その関数クラスの拡張を研究の目標としている。本講演では,特に1変数の場合について解析の手法,ポイントについて述べる。


楢崎さんの発表の様子

斎藤誠紀先生(本校電気工学科 助教)

題目:プラズマ – 材料相互作用解明に向けた分子シミュレーション

アブストラクト:
製造方法が異なる炭素材は,異なる耐プラズマ特性を有する。材料の特性にばらつきが生じる原因は,材料を構成する原子同士の化学結合の仕方や原子配位の違いに起因していると想像できる。そこで,本研究では,炭素材に水素原子を照射する分子シミュレーションをサブマイクロメートルスケールで行い,材料の原子配位が材料中の原子の移動にどのように影響するのかを調べる。


斎藤先生の発表の様子

松本純一さん(明治大学大学院先端数理科学研究科現象数理学専攻 博士前期課程2年)

題目:ウェーブレットを利用した景気循環の山と谷の抽出

アブストラクト:
リーマンショックなどによって世界経済の先行きが不透明な昨今,現在の景気状況を把握することは非常に重要である。しかし,今の局面は時間が経ってからでないと分からないのが現状である。そこで本研究は,景気動向の判断によく利用されるGDPデータにウェーブレット解析を適用し,データの構造に変化を及ぼす景気循環の山と谷の抽出を試みる。また,得られた結果と内閣府の情報とを比較し,問題点を検証する。


松本さんの発表の様子

出来光夫先生(東京電機大学工学部数学系列 助教)

題目:種々の関数空間におけるサンプリング定理

アブストラクト:
帯域制限性をもつ2乗可積分関数に対するサンプリング定理は,数学の理論としてだけでなく,工学への応用においても古くから知られる有名な結果である。この古典的結果の様々な関数空間への一般化について講演する。


出来先生の発表の様子

澤野嘉宏先生(首都大学東京理工学研究科 准教授)

題目:関数空間の入門

アブストラクト:
関数空間には多種多様なものがあるが,特に本講演ではユークリッド空間での関数空間に限定してその性質をまとめる。この分野でどのようなことが議論されているかを説明していければと思う。


澤野先生の発表の様子

桒原浩平先生(本校建築学科 准教授)

題目:人体熱モデルを用いた暑熱環境における着衣素材の熱特性の評価?吸汗速乾素材vs.綿素材?

アブストラクト:
吸汗速乾素材と呼ばれる衣服素材が皮膚温や快適感等の生理心理反応に及ぼす影響を評価するために,発汗を伴うような高温環境において綿と吸汗速乾性素材の衣服を着用した被験者実験を行ない,平均皮膚温や主観申告等を実測した。その結果,速乾素材は綿素材よりも有意に汗が蒸発しているにもかかわらず,着用時の平均皮膚温は綿素材よりも速乾素材の方が高くなった。すなわち吸汗速乾性衣服は熱的に有利とは言えない結果となった。


桒原先生の発表の様子