釧路高専第6回若手理・工学セミナーを開催しました

釧路高専第6回若手理・工学セミナーを開催しました

 8月12日(金)及び13日(土)の2日間,本校大講義室において,日本各地から様々な分野の研究者にお集まりいただき,第6回の若手理・工学セミナーを開催しました。
 本セミナーでは,本校から機会工学分野 福地 孝平先生,電子工学分野 大前 洸斗先生,建築デザインコース 馬淵 大宇先生,一般教育部門 登口 大先生がご発表を行い,情報工学分野 鈴木 未央先生が座長として参加しました。一般参加者16名に加え,本校の学生も18名参加し,分野を越えた熱い議論や質疑応答が繰り広げられました。また,本校の学生からも,大学生活,研究に対するモチベーションや内容に関する質問が出るなど,大変有意義な機会となりました。

 なお,第7回若手理・工学セミナーは,2017年夏の開催を予定しております。
 お問い合わせは,世話人の鈴木 未央(本校 情報工学分野)までよろしくお願いします。
電話: 0154-57-7359
e-mail: mio@kushiro-ct.ac.jp(@を半角へお直しください)

本セミナーの講演プログラムは,コチラです。

具体的な発表内容は以下のとおりになっております。

「登口 大先生」 (本校一般教育部門 講師)

題目:題目:確率外力を持つ単独保存則方程式について

アブストラクト:
単独保存則方程式は滑らかな初期条件に対して時間局所的な古典解の存在が知られている。その解は特性曲線と呼ばれる曲線上で一定の値を取り,特性曲線が互いに交わるとき,解の不連続性が生じる。これが原因となり,一般に,大域的な古典解の存在,超関数解の一意性は得られない。この問題を解決するために,先行研究ではエントロピー解やキネティック解の概念が導入された。本研究では,確率外力を持つ単独保存則方程式に対するキネティック解の一意存在性について紹介する。


登口先生の発表の様子

「平山 浩之先生」 (宮崎大学テニュアトラック推進機構講師)

題目:Random data Cauchy problem for the nonlinear Schrodinger equation with derivative nonlinearity

アブストラクト:
非線形項に1階の微分を含む非線形シュレディンガー方程式の初期値問題について考える。非線形項が非共鳴条件を満たしている場合には,先行研究によって尺度臨界指数のソボレフ空間における適切性および解の散乱が得られている。本講演では確率化された初期値を与えることで,尺度臨界指数のソボレフ空間よりも広い空間においてほとんど確実に適切性および解の散乱が得られることを示す。


平山先生の発表の様子

「高岡 邦行さん」 (早稲田大学大学院教育学研究科 博士課程5年)

題目:平面閉曲線の交点の情報から得られる文字列の性質について

アブストラクト:
向きつけられた平面閉曲線に対して,その曲線を向きに沿ってたどったときに現れる各2重点に,その交差の方向に従って,文字L(Left) と文字R(Right) を対応させると,その曲線の2重点の個数とそれぞれ同数個のLとRからなる文字列が得られる。今回は,こうして得られる文字列の性質について話したいと思う。

「福地 孝平先生」 (本校機械工学分野 助教)

題目:Al基傾斜発泡金属の製造法と機械的性質について

アブストラクト:
近年,スポンジのように内部に意図的に気泡を含有させた発泡金属と言う金属材料について,その軽量性や吸音性,衝撃吸収性などに注目が集まっている。本研究では,発泡金属に内在する気泡密度を能動的に傾斜させる手法を提案し,提案手法により製造した発泡金属の組織と気泡分布状態について検討する。また,微視組織や気泡分布状況と硬度の関係についても明らかにする。


福地先生の発表の様子

「中田 聡史先生」 (神戸大学大学院海事科学研究科津波マリンハザード研究講座特任助教)

題目:海洋観測・予測の最新技術:霧多布周辺の海況の例

アブストラクト:
近年になってコンピュータや人工衛星の性能が向上したことにより,海洋予測・シミュレーション技術が実用化され,「“海の”天気予報」と呼ばれる海況予報が現業化されてきている。この分野の進展が,漁業やレジャーといった産業だけでなく,巨大地震による津波や台風による高潮といったマリンハザードを減災するための要素技術となってきている。本公演では,道東や火散布沼における海況予報の取り組みを紹介する。

「竹崎 太智さん」 (長岡技術科学大学大学院工学研究科エネルギー・環境工学専攻博士1年)

題目:無衝突衝撃波と実験室宇宙物理学

アブストラクト:
宇宙空間で観測される高エネルギー粒子(宇宙線)の加速・生成には無衝突衝撃波が重要な役割を果たすことが知られているが,その詳細な物理機構は未解明である。この衝撃波を実験室で再現するには,スケール則に基づき高速のプラズマ流を形成する必要がある。本講演では,まず無衝突衝撃波の概要について説明し,高強度レーザーやパルスパワー装置で行われている実験室宇宙物理学について紹介する。


竹崎さんの発表の様子

「菊池 崇志先生」 (長岡技術科学大学大学院技学研究院准教授)

題目:パルス大強度相対論的電子ビーム照射による水質環境保全を目指した放射線化学研究

アブストラクト:
有機フッ素化合物や染料,耐性菌を作り出す可能性のある医薬品などの難分解性水溶物が水質環境汚染を起こし,問題となっている。このため,コストやエネルギー効率の高い処理方法が模索されている。本研究では,放射線の一種である極短パルスで大強度の電子ビームの照射によって引き起こされる化学反応に着目し,難分解性の水質環境汚染物質を処理する新たな手法として提案している。動物プランクトンの不活化や染料の分解,抗生物質の処理効果が実験的に確認できている。


菊池先生の発表の様子

「大前 洸斗先生」 (本校電子工学分野 助教)

題目:化学溶液法による硫化すず薄膜の作製

アブストラクト:
太陽電池の普及のためには,太陽電池材料の原料コストと作製コストを下げる必要がある。近年,硫化すず(SnS)はレアメタルを使わず安価で,有害な元素を使用しない安全な太陽電池材料として注目を集めている。しかし,硫化すずの安定な組成にはSn2S3やSnS2などの異相があるため,作製方法を十分に検討する必要がある。本研究では,低コストな作製方法である化学溶液法を用いて硫黄とすずが1:1である硫化すずの作製条件について検討する。


大前先生の発表の様子

「小森 大地さん」 (北海道大学理学院数学専攻博士後期課程1年)

題目:局所コホモロジー群の直観的表示とその応用について

アブストラクト:
佐藤超関数は,代数的な道具立てを用いることで佐藤幹夫により導入された。それは正則関数の層を係数に持つ局所コホモロジー群の理論を用いたものであり,抽象的で高度な知識を必要とする。そこで森本光生,金子晃らによって佐藤超関数に対して直観的な理解が得られるような定義が与えられた。本講演では森本,金子らの結果を一般の層を係数に持つ局所コホモロジー群にまで拡張し,その直観的表示を与える枠組みについて論じる。


小森さんの発表の様子

「梅田 耕平さん」 (北海道大学大学院理学研究院専門研究員)

題目:GevreyクラスのWhitney jetsを係数に持つ大域コホモロジー群の消滅定理

アブストラクト:
角領域上のWhitney functionでコーシー・リーマンの関係式を満たすものは,漸近展開可能な正則関数を与える為,漸近解析において重要な役割を果たす。従って,Whitney functions を係数に持つデルバー複体の完全性も一つの大きな問題である。本講演では,GevreyクラスのWhitney jetsを係数に持つデルバー複体の完全性について論じる。


梅田さんの発表の様子

「馬淵 大宇先生」 (本校建築デザインコース 助教)

題目:没入型仮想環境技術を活用した寸法感学習スキーム「スケトレ」の開発

アブストラクト:
建築やデザイン教育において,空間や物の寸法(数値)と実際の広さや大きさ(イメージ)を一致させること(寸法感の習得)は非常に重要とされてきた。このため従来は,図面や模型を用いた演習が行われてきたが,建築空間のような大きな空間を再現し演習することは困難であった。本講演では,没入型仮想環境技術を用いて開発を進める,新たな寸法感学習スキーム【スケトレ:スケールトレーニング】の進捗状況を紹介する。


馬淵先生の発表の様子

「二瓶 泰範さん」 (大阪府立大学海洋システム工学分野准教授,東京大学総合研究機構特任研究員)

題目:浮体式洋上風車の近年の動向と水槽試験について

アブストラクト:
浮体式洋上風力の研究開発が国内外において急ピッチで進んでいる。実海域における大型プロジェクトにおいて,とても重要な事の一つとして水槽試験が挙げられる。建造後に重大な事故が起こってからでは遅いからである。水槽試験と呼ばれるスケール模型試験によって,未然に実海域で起こり得る様々な現象を事前に検討することが可能である。本発表では従来の海洋構造物における水槽試験と比較しながら,浮体式洋上風力発電の水槽試験について述べてみたいと思う。


二瓶先生の発表の様子