釧路高専第7回若手理・工学セミナーを開催しました

釧路高専第7回若手理・工学セミナーを開催しました

 8月10日(木),11日(金)及び12日(土)の3日間,本校大講義室において,日本各地から様々な分野の研究者にお集まりいただき,第7回の若手理・工学セミナーを開催しました。
 本セミナーでは,本校から機械工学分野 福地 孝平先生,電気工学分野 齋藤 誠紀先生,本田 匠先生が発表を行いました。一般参加者36名に加え,本校の学生も18名参加し,分野を越えた熱い議論や質疑応答が繰り広げられました。また,本校の学生からも大学生活,研究に対するモチベーションや内容に関する質問が出るなど,大変有意義な機会となりました。

 なお,第8回若手理・工学セミナーは,2018年夏の開催を予定しております。

 お問い合わせは,世話人の鈴木 未央(本校 情報工学分野)までよろしくお願いします。〈お問い合わせ先:電話: 0154-57-7297,e-mail: mio@kushiro-ct.ac.jp(@を半角へお直しください)〉

 本セミナーの講演プログラムは,コチラです。

 具体的な発表内容は以下のとおりになっております。

「斎藤 誠紀先生」 (本校 創造工学科エレクトロニクスコース電気工学分野准教授)
題目:ヘリウムバブルが形成されたタングステン材へのプラズマ照射シミュレーション
アブストラクト:
タングステンは,融点が高く,スパッタリング特性にも優れるため,国際熱核融合実験炉ITERのダイバータ板に用いられることが決まっている。しかし,ヘリウムプラズマ照射により,ナノスケールの泡状構造がタングステン材表面に発生することが知られている。ITERでは,重水素と三重水素の核融合反応の結果,ヘリウムが発生する。そのため,ITERのダイバータ板でも実際に泡状構造が発生する可能性がある。その結果,ダイバータの耐プラズマ特性が変化することが予想される。そこで,本研究では,分子シミュレーションを用い,泡状構造形成に伴うヘリウムのリテンション特性等の変化を調べる。


斎藤先生の発表の様子

「平山 浩之先生」 (宮崎大学テニュアトラック推進機構講師)
題目:非線形4階シュレディンガー方程式の可制御性について
アブストラクト:
ある二つの時刻において,解が与えられた値を取るように外力を決定する問題を可制御問題と言う。 本講演では,非線形項に1階の微分を含む非線形4階シュレディンガー方程式の可制御問題を考える。 部分積分による計算を用いて方程式を書き換えることで, より広い関数空間における一意解が得られるような外力が存在することを示す。


平山先生の発表の様子

「羽鳥 冬星さん」 (株式会社リクルートテクノロジーズITソリューション統括部ビッグデータ部ビッグデータビジネスコンサルティンググループ)
題目:個社売上予測の精度上げ取り組みの紹介
アブストラクト:
企業が保有している膨大なデータを用いた取り組みの一つに,指標の予測がある。予測案件ではある一つの指標を予測する場合と,複数の指標を同時に予測する場合がある。特に個社の予測案件において予測期間が長い場合は,遠い未来の個社ごとの振る舞いを予測する必要があるために高難度である。本発表では8000社の1年先予測を行った個社売上予測案件において,モデリングの過程で行った精度向上の取り組みを紹介する。


羽鳥さんの発表の様子

「山本 佳奈先生」 (北海道大学大学院文学研究科日本学術振興会特別研究員(RPD))
題目:人口圧と農牧複合:東アフリカ・タンザニア・ボジ高原における牛群の世代更新と家畜商の関わり
アブストラクト:
アフリカの半乾燥地とその周辺域でくらす農耕民にとってウシ・ヤギ・ヒツジなどの家畜は重要な財産である。しかしながら人口圧が高まると作物と放牧地のあいだで土地をめぐる競合が生じる。本発表では,タンザニア・ボジ高原の人々が,土地をめぐる競合をどのように緩和してきたかを,2005年から2009年にかけて調査村で収集したウシ飼養に関するデータより明らかにする。


山本先生の発表の様子

「芦野 隆一先生」 (大阪教育大学 教授)
題目:四元数値関数の時間周波数解析
アブストラクト:
ハミルトンは,二次元ユークリッド空間における平行移動と回転を表す複素数を拡張して,三次元ユークリッド空間における平行移動と回転を表すことができる四元数を定義した。四元数の積は非可換であるため,四元数値関数の時間周波数解析には特別な注意が必要である。この講演では,四元数値関数の時間周波数解析の初歩を概観し,その応用について述べる。


芦野先生の発表の様子

「本田 匠先生」 (本校 創造工学科エレクトロニクスコース電気工学分野助教)
題目:画像照合の実応用分野とその実用例
アブストラクト:
近年,画像処理を用いる照合や復元が幅広い分野で使われている。画像照合の技術はロボットビジョンや生産工程の自動化,道路交通システムなどの分野において広く活用されており,最近では,医療分野での検査技術,バイオセンシング,ナノテクノロジーにおいて要望が高まっている。本研究ではバイオセンシングへの応用となる微生物のトラッキングした実験結果や,サケマス稚魚の追跡測定などを行ったため紹介する。


本田先生の発表の様子

「小森 大地さん」 (北海道大学理学院数学専攻博士後期課程2年)
題目:チェックドルボーコホモロジーを用いた無限階擬微分作用素の表象理論における諸問題解決への展望
アブストラクト:
無限階擬微分作用素の表象理論は,佐藤幹夫の超局所作用素の表象理論を応用することで青木貴史によって提案され,現在では偏微分方程式の研究を行う上で重要な基礎理論となっている。しかし,青木による表象理論はいくつかの未解決な問題が残っている。本講演では,青木の表象理論の諸問題を紹介し,本多,伊澤,諏訪によって提唱されたチェックドルボーコホモロジーの理論を応用した諸問題の解決への展望を述べる。


小森さんの発表の様子

「依藤 司さん」 (岡山理科大学工学部建築学科修士課程1年)
題目:開放感の高い狭小住空間の設計に関する基礎的研究
アブストラクト:
近年,都市部を中心に,狭小な土地に家を建てる狭小住宅が注目されている。しかしながら,狭小住宅での生活には工夫が必要であり,特に視覚的な開放感を保つことは重要である。本研究では,都市型狭小住宅の文献資料を元に,狭い空間であっても高い開放感が得られる設計上の工夫について調査している。本講演では,この研究過程を紹介し,開放感の高い狭小住空間の設計に活用できる資料の作成へ向けた一助をご覧いただく。


依藤さんの発表の様子

「藤田 夢さん」 (岡山理科大学工学部建築学科学部4年)
題目:大型商業施設における吹き抜けを有するエントランスホールが賑わいに与える効果に関する研究
アブストラクト:
岡山市では,「魅力と賑わいのある中心市街の創出」を政策として掲げている。近年その一環で,中心市街地に都市型の大型商業施設が建設された。本研究では,その施設の吹き抜けを有するエントランスホールに注目し,来館者を観察することで,その空間が賑わいの創出に与える効果について調査している。本講演では,その観察結果を提示しながら,大型商業施設における吹き抜けを有するエントランスホールの可能性について紹介する。

「鈴木 俊夫先生」 (流通経済大学教育学習支援センター専任講師)
題目:Construction of the Fractional Radon Transform and its application
アブストラクト:
分数次Fourier変換は通常のFourier変換の自然な拡張であり,信号処理,暗号理論等の様々な面で応用されている。本講演では分数次Fourier変換に基づいた,分数次Radon変換を提案し,さらにその性質や応用について考察する。


鈴木先生の発表の様子

「齋藤 佑樹さん」 (東京大学大学院情報理工学系研究科修士2年)
題目:なりすましセキュリティに敵対する高品質な音声合成
アブストラクト:
音声合成とは,コンピュータを用いて人工的に音声を生成する技術である。近年の音声合成方式の主流となっている手法は,生成される音声の声質の制御が容易だが,その品質が著しく低下するという問題がある。本発表では,この品質劣化への対策として,人間により生成された音声と音声合成技術により生成された音声を識別するなりすましセキュリティに敵対するアルゴリズムを紹介し,その有効性について述べる。


齋藤さんの発表の様子

「寺木 悠人先生」 (旭川工業高等専門学校一般理数科講師)
題目:銀河系内ブラックホール降着円盤は,ペタ電子ボルトの宇宙線を加速できるか?
アブストラクト:
宇宙線の発見から100年以上たった現代においても,宇宙線の加速機構や加速源は明らかになっていない。特にペタ電子ボルトのエネルギーをもった宇宙線の加速源は,銀河系内にあると考えられるがその観測的証拠はいまだに得られていない。本発表では,銀河系内に存在するいくつかの種族のブラックホール降着円盤において,乱流状態となったプラズマ中で宇宙線がペタ電子ボルトまで加速されるという新しいモデルを提案する。


寺木先生の発表の様子

「馬淵 大宇先生」 (岡山理科大学工学部建築学科講師)
題目:VRを用いた建築設計手法に関する基礎的研究
アブストラクト:
昨今,注目を集めるVRは,ゲームや娯楽分野だけでなく,建築や教育等の様々な分野での応用が期待されている。本研究では,VRが等身大の臨場感ある環境を構築できることに着目し,縮小された模型を用いた従来の建築設計との違いから,VRを用いた建築設計の有効性について言及することを目指ざしている。本講演では,その結果の一部をご紹介し,新しい建築設計方法の可能性をご覧いただく。

「二瓶 泰範先生」 (大阪府立大学大学院工学研究科海洋システム工学分野准教授)
題目:四胴ロボット船の研究開発
アブストラクト:
二瓶等は養殖場等における機械化,自動化を進めるために,四胴ロボット船を研究開発している。我々が描く四胴ロボット船を用いた養殖場の機械化や自動化の将来展望について紹介する。従来の船舶は,単胴船,双胴船,三胴船が用いられる。何故四胴か,四胴にすることのメリットやデメリットについて述べる。さらに四胴ロボット船の研究開発プロジェクトにおける開発事項や既に得られている研究成果についても述べたいと思う。


二瓶先生の発表の様子

「竹崎 太智さん」 (長岡技術科学大学大学院工学研究科エネルギー・環境工学専攻博士後期課程2年)
題目:卓上サイズのパルスパワー放電装置を用いた宇宙物理実験
アブストラクト:
宇宙空間の高エネルギー粒子(宇宙線)の生成機構は明らかにされておらず,宇宙物理学の重要な課題とされている。 その物理機構の解明には,宇宙プラズマと電磁場の非線形相互作用による非熱的なエネルギー散逸過程と粒子加速過程を理解する必要があり,実験室で宇宙プラズマを再現・計測する「その場観測」が要求されている。 本講演では我々が提案している,パルスパワー放電を用いた新たな宇宙物理実験手法を紹介する。


竹崎さんの発表の様子

「北川 広大さん」 (九州工業大学大学院生命体工学研究科人間知能システム工学専攻博士前期課程1年)
題目:歩行中における上肢の加速度を用いた下肢状態の識別について
アブストラクト:
スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを歩行リハビリや高齢者の転倒防止システムに応用することを目的として,歩行中における上肢と下肢の関係や上肢の加速度から歩行状態を識別する方法について検討する。また,福祉工学や生体医工学における研究事例についても紹介する。


北川さんの発表の様子

「福地 孝平先生」 (本校 創造工学科スマートメカニクスコース機械工学分野助教)
題目:局所発泡金属の気泡制御と放熱・強度特性評価
アブストラクト:
発泡金属とは,金属内部に意図的に気泡を含有させることによって作製される多孔質金属である。発泡金属は内部の気泡によって緻密材よりも軽量で減衰能や衝撃吸収能に優れるなどの特性を有しており,近年,消音材や断熱材などに用いられ始めている。本研究では,発泡金属内部の気泡分布を制御する方法について検討すると共に,発泡の有無による放熱特性の違いや,緻密部の強度特性について検討する。